大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)54号 判決

一 原告主張の請求原因事実のうち、特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨および審決理由の要点については、当事者間に争いがない。

二 そこで、以下審決を取消すべき違法事由の存否について検討する。

(一) 成立に争いのない甲第三号証によれば、引用例第五ページ左欄下から五行から同ページ右欄六行までに「フイルムまたはテープFは単に綴鋲要素の縁MとMとの間の中央区帯のみに沿うて塗布して附着され該弾性フイルムまたはテープFの幅とほぼ同大の幅を持つ被覆Cの露出された頂表面を完全に被う。(中略)上記のフイルムまたはテープFを上記の被覆表面に附着させたならば、それによりその露出表面は乾いた状態にあるから綴鋲要素帯を直ちに巻くか又は折りたたんで包の形にすることができる。」と記載されていることが認められる。この記載によれば、引用例の被覆はテープによつて充分に保護されるから、綴鋲要素帯を包に巻いたとき隣接した綴鋲要素が接着することは完全に防止されるものではなかろうかと一応考えられなくはない。しかし、引用例のものにおいてテープを被覆表面に附着させれば綴鋲要素帯を直ちに巻くことができるのは、テープを被覆表面に附着させることによつてその被覆の露出表面が一応乾いた状態になるからであつて、その後テープの端から被覆に塗布された接着剤がはみ出し、巻かれた綴鋲要素帯の隣接した層が接着するに至らないものと断言することはできない。成立に争いのない甲第二号証の一(本願発明の明細書)によれば、「この発明はステープル片に関するものであり、一九五六年五月一日に発行されたヘルシー(Hershey Lerner)の米国特許第二七四三四四五号に現わされた構造体の改良をも含む。ラナーの構造体に対する経験で順次に説明される多くの不利益が示される。(1)隣接したステープル素材の間に用いられた接着剤はもちろん粘着性である。隣接したステープル素材が粘性接着剤と共に接着され、それから組立体がコンパクトなロールに巻かれる時、ロールの隣接した層は接着する傾向をもつ。このことはこの発明の操作および利用において大きな不利益を引き起した。」(明細書二ページ一行より一三行まで)と記載されていることが認められる。このように本願発明が明白に引用例記載の発明の欠点を改良する意図のもとになされている事実に照らしてみれば、引用例のものにおいては、巻かれた綴鋲要素帯の隣接した層はテープの端からはみ出した接着剤により接着する傾向があるものと認めるのが相当である。そうだとすれば、引用例のものは、テープが被覆の頂表面の幅と実質的に等しい幅のものであると解さざるをえず、本願発明が意図したようにテープの端からはみ出した接着剤により綴鋲要素帯の隣接した層が接着することが無い程度にテープの横の部分が被覆を越えて綴鋲要素上に拡げられているものと認めることはできない。したがつて、本願発明と引用例のものとはこの点において相違があるといわなければならない。

(二) ところで、審決は、たとえ本願発明が接着剤の層を越えてテープを設けた点で引用例のものと相違するとしても、このようなことは当業者が格別発明力を要しないでできる程度のものである旨説示する。この説示は、本願発明は引用例記載のものから当業者において容易に推考することができると判断したものと解するのが相当である。そして、審決は糊面に附着する覆片を糊面よりも充分に大きくすることは従来周知であるとするのであるが、この点に関し審決の掲げる参照例および成立に争いのない乙第一号証の記載は、原告もいうとおりいずれもその技術内容において本願発明とその内容を異にし周知例として適切ではない。しかしながら、一般に、接着剤の層を覆つて取付けたテープの端から接着剤がはみ出すような場合には、そのテープの巾を拡げ接着剤の層を越えてテープを設けることは、吾々の経験則に照らしても容易に考え及ぶことであり、当業者においては容易に推考しうる程度のことと認めるのが相当である。したがつて、審決が本願発明が引用例から容易に推考しうるとした判断には誤りがないと考えられる。

三 よつて、審決にはこれを取消すべき違法はないから、原告の請求を失当として棄却する。

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